不得手な話(自称)

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シャワーを浴びて戻ると、男は相変わらずベッドで唸っていた。素肌のまま隣に潜り込む。これ、とスマホを見せられた。
「書いた。薄っぺらい、恋の話」
その文字列は20分前の会話のおさらいだった。書き手の感情が知れない、事実の書き起こし。これじゃ、なにもわからない。
「どうだい」
と言われても。メンソールを咥えて火をつける、その間だけ時間を稼ぐ。男は私の言葉を待っている。
「お前はさァ……」言葉を探して、諦めた。「センスがないよ」
傷ついたような顔をするのが面白い。
「文章の?」
「恋愛の」
「はは、それは知ってる」
安心したような顔をするのが憎らしい。
「私のさァ…ことは、もう書くな。頼むから」
「何故?」
「なんでも」
男はううむ、とまた唸る。
「でも、そうするとおれは困る」
「なにが」
「この関係が、唯一いちばん、恋に近いと、思うから」
…そういうところが、お前、本当に、センスがないよ。
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公開:19/06/23 04:14
更新:19/06/23 17:01

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