朝食まえの私の秘密

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空が薄っすら白む明け方、花瓶に生けてある花々からじっくりと一本の薔薇を選び抜き取る。キッチンにある椅子に座り、花びらを一枚、一枚外側からゆっくりと丁寧に剥いでいく。あんなに綺麗だった花びらも一度床に落ちてしまえば何の意味も持たず、茎だけになった薔薇は無様だ。全身を駆け巡るような恍惚感に包まれながらその残骸を眺める。ひときしり愛でると急に興味を失い乱雑に花びらをかき集めタワーマンションの窓からばら撒く。そして何事もなかったかのように夫の朝食を作り始める。しばらくして夫が起きてきて無意識のように出来立ての朝食を口に運んでいるのを眺める。夫は薔薇一本無くなったことに気づいたことはない。むしろ花があることすら気づいているのか怪しい。本当に何事もないと、気づいていないと思っているのだろうか。その無神経さに足の裏が冷たくなる。
公開:19/06/24 08:39

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