連奏曲Ⅰ~早春への憧れ

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放課後の音楽室で、中田章の『早春賦』を弾いていました。
授業で聴いたモーツァルトの『春への憧れ』と、響きが似ていると感じ、確かめたくてならなかったのです。
今日は合唱部が休みで、ピアノが使える。私の通う教室は、課題の演奏以外許されませんし、他の音に浸ると、感覚が薄まって追えなくなる。家にも音源はありますが、私は自分の指で捕まえたかったのです。

授業の音を頭で再生し、私は『早春賦』を弾きました。弾き込む間に、二つは混ざって判別が付かなくなり、それでも意地で弾いていると、
「早春への憧れ、かな」
準備室から先生が顔を出しました。
いらっしゃるとはつゆ知らず、私は俯きました。
「代わって」
先生は『早春賦』を弾きました。促されて私は歌いました。二番に差し掛かる辺り、伴走が『春への憧れ』に変じ、私は『早春賦』を歌い上げました。
検証の答えより、その時私は、先生と感覚を共有出来た事を喜んだのです。
青春
公開:19/06/22 00:00
更新:19/06/21 23:42
相似感覚的メロディ 中田章とモーツァルト

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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