ケーキ

「ichigo」という名前でケーキ屋を始めた。当然、目玉はショートケーキ。でもそれだけじゃない。お客さんとの「一期一会」を楽しむ街のケーキ屋。そんな意味も込めていた。

すぐに、ある高校生カップルが常連になった。バレンタイン、クリスマス、誕生日。それから何でもない日の放課後も。二人で来店して、外のベンチに座って食べさせ合っている様子が微笑ましかった。ところが、やがて二人は店に来なくなった。卒業したのか、それとも…。

数年後、二人はまた仲良く来店した。あれから、彼女は手作りスイーツに凝っていたのだという。でも、一生の記念は、ぜひ思い出の店のケーキで祝いたいとのこと。だから、とびきり大きなケーキを用意してあげた。

それから、またその「家族」は常連になった。1本2本と毎年増えるロウソクの数に、街のケーキ屋の醍醐味を感じながら、今年もケーキの上にいちごを飾る。甘さ控えめの、子供用ケーキの上に。