私と狂気

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瞑色の空の下、私は交差点で立ち止まった。これから始まる夜を前に、道端の花壇のパンジーが不気味に静まり返っている。
角から男がふらふら歩いてきた。
私は男が右手の紙袋を何度も何度も壁にぶつける様子を想像し、震え上がった。
というのも、先日電車に乗っていた時、物騒な独り言を呟きながら車内を歩き回る男を見かけたのだ。大の男の私でも、恐ろしいものは恐ろしい。
あの男も、そういう種類の人間なんじゃないだろうか。
現実離れした薄明の蒼に染まっているからこそ、私は世界の少しの不調和にでも鳥肌が立った。
ああいう奴らは何をするか分からない。あの男が狂人たる行動を取らないなら、その隙に男を取り押さえなければ。
私は後ろから飛びかかって男の首を絞めた。
その最中、下校中らしき女子高生に目撃されてしまい、問題は倍になった。
私は男の死体を置いて、女子高生を拐った。
私は逃げた。
空には鋭い三日月が浮かんでいた。
ホラー
公開:19/06/22 15:31

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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