続編

「で、親子で梅を収穫するラストシーンにつながるってわけ」
青臭かった大学生の俺は、好きな女の子に自分の脚本がいかにシブいかを自慢した。この脚本が賞を獲ったら告白しよう。そんなことまで考えていた。
でも、それは叶わなかった。同じサークルにライバルがいて、そいつの脚本が出品用に選ばれた。俺の脚本は、大学の映画同好会で映像化するにはシブすぎたのだ。ついでに彼女もそいつと付き合った。いつの時代もできる奴がモテる。

そんな青くて渋い青春を思い返していると、スマホの通知に懐かしい名前が表示された。
「映画見た！すごいヒットだね！」
そう、俺はいま、映画監督として一本の映画をヒットさせた。あの時の想いを忘れず、夢を追い続けたのだ。続編の制作も決定していて、まさにそのために前作を観返しているところだった。スクリーンでは、あの時実らなかった恋の悔しさと、あの時実らなかった梅の実が、たしかに青く光っていた。