孵る野望①

「モリ・アオイ？」
ああ、首を傾げてる。険しい眉間の皺。眼光の鋭さ。地を這う様な声。素敵よ王子様♡
「ちっ……汚な過ぎだっつーの」
舌打ち？これが舌打ちね。いやんカッコ良い！
なんて見惚れてる場合じゃなかった。貴方のミミズの様な、美味しそうな筆跡を真似てみたけど。人間の文字って難しいのね。
金網の向こうの防火用水から、いつも見てたわ。念願叶ってこの姿を手に入れるまで、イモリに食べられたりトンビに攫われたりタヌキに馬鹿に（以下略）
とにかく長かった。それもこれも、貴方と結ばれる為。愛しい私の王子様。

「ケロケロケケッ！（結婚して）」
「……酷ぇ声。風邪かよ」

あの、ヒキガエルのババア！
小鳥の声って言ったじゃない。身を切られる思いで差し出したのに、オタマジャクシの尻尾じゃ不足だとでも！？
「ま、いいや。取りあえず帰れ」
そう私は元カエルって。ええ！？
「採用面接に、婚姻届出すなボケ！！」