赤い糸の向こう側 #1

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大雨の中、自宅前の横断歩道で足止めを食らっていた時。
赤い傘を差した、女子高生の姿が見えた。
彼女だ。
瞬時にそう思った。
小学校の同級生だった彼女。
告白はできなかったけれど、ずっと好きだった。彼女の綺麗な顔と、可愛い仕草と、そして彼女との他愛もない雑談の一言一句がフラッシュバックする。
信号が変わると、僕の足は彼女を追っていた。
信号待ちのおかげで、彼女と一定の距離が保てた。
彼女を見失わない速度で歩く。
彼女は一軒の家の前で鞄から鍵を取り出し、ドアを開けて中へ入った。
彼女の家は、ここにあったのか。
気づくと雨は上がり、彼女の庭の赤い実が輝いている。
僕は意を決して、彼女の家のインターホンを押して素早く隠れた。
しばらくしてドアが開き……中から中年の女性が出てきた。
…え?
彼女は1人だから鍵で入ったんじゃなかったのか?

ドアが、閉まった。
気づくと僕は雨でずぶ濡れになっていた。
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公開:19/06/20 22:34
更新:22/03/07 13:54

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

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