キープボトル

「先生。後ろの棚にある、人の名前の書かれたボトルは何ですか？」
診察中、患者に聞かれた。始めてこれを見た人は皆同じ質問をする。
「これは患者さんのキープボトルですよ」
「キープボトル？飲み屋とかである、あのキープボトルですか？」
「そうです。ただ、中に入っているのはアルコールではありますがお酒ではありません。湿布薬です」
「湿布薬？」
「ええ、老若男女、皆の肌や体質に合った湿布薬剤を配合しているうちに、よく来る患者さんはこうして薬剤をキープするようになったんです。もしよかったら君もやりますか？この捻挫、普通は１カ月かかるところ、２週間で治してみせますよ。その分、少し代金は高くなりますが」
「先生！お願いします！夏の大会までに間に合わせたいんです！」
「分かりました。君の分、キープしておきますね」
当院は未成年に大人気のスポーツ診療所である。ボトルキープと言う、少し大人びたことが出来るから。