幼馴染

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みんな明らかに気を遣っていた。待ち合わせから妙にテンションが高くて、「ハロー!」なんて挨拶してくるし、とことん私を甘やかしてきた。失恋した私を元気づけようとしてくれているのが分かった。だから私も全力で乗った。でも、どこか気持ちは晴れなかった。

幼馴染のユリだけは、あまり喋らず、じっと私の様子を見ているようだった。みんなと駅で別れ、家の近いユリと二人きりになると、ユリはようやく話しかけてきた。
「寄り道していかない?美味しいケーキ屋さん知ってるんだ」
ユリに言われ、最寄り駅の手前で降りてケーキ屋へ立ち寄った。

「こういう時は、甘いもの食べて忘れるに限るよ。ま、ここのショートケーキは甘さ控えめだけどね」
ケーキを頬張りながらユリは優しく微笑んだ。
「確かに、そんなに甘くないね。でも、そのくらいがちょうどいいや」
ユリのほっぺについたクリームを見ながら、その日初めて、心の底から笑って泣いた。
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公開:19/06/20 19:05
更新:19/06/22 11:35

Miraishi

「カミヒトエ」
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原稿用紙1枚分の積み重ねで創る、
現実と紙一重のフィクションの世界。

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