餓鬼（がき）

両手に特大のスーパー袋を提げ、ふらふらしながら帰宅する。
電気を切った冷蔵庫に詰め、部屋の片付けから開始する。床、テーブル、しなびたシーツの上、流しからガス台から積み重なった鍋と食器の間まで、生ゴミとビニプラとインスタントが散乱してる。

空けた袋にゴミを突っ込む。回収日なんて今更だ。引っ越して以来、毎日毎日この様だった。片付けるのは置き場所を作る為で、直後にまた塞がる。手持ちの袋を使い切り、座布団一枚と冷蔵庫までの最短距離を確保したところで力尽きた。
冷蔵庫へ這いずり、手当たり次第かぶり付く。味も品目も無関係に噛み砕いて胃に収める。数時間掛けて中身を食い尽くし、妊婦の様にせり出した腹を抱え、倒れた。

――ぺた。
身動きもならない耳に、いつもの足音。
今日で全財産消化した。明日には白骨死体だな、前のお前みたいに。
いいよ、解ってる。そんな顔すんな。
折角なら、残さずきれいに平らげてくれ。