走りたい

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走る。
振り返ることなく、とにかく。
後300メートルとなり、全力だった。
足に履いたスパイクが
競技場のアンツーカーに喰らいつく。
息はすでに切れ切れになって、
それでも最後の力を振り絞った。
後方に付くライバル校の選手の息遣いや足音は
全くと言うほど聴こえてこない。
競技開始の15分前の招集の場。
あいつは自信に満ち溢れているようでいた。
俺は監督の威圧的な言葉に動揺していた。
「何が何でも負けるなよ」
あいつはこちらに気づくと、鼻で笑っているようだった。
「くそっ」
怒りを感じた。
残り100メートル。
もうすぐだ。
大丈夫。
いける。
しかし、ゴールテープを切ったのはあいつだった。
全身から疲れどころではない喪失感に包まれ、
吐きそうだった。
競技場に響く歓声。
それは、俺に向けたエールではなく、
最後の走者に向けたもののように見えた。
俺は、本当に自分の意思で走ったのだろうか?
青春
公開:19/06/19 20:45

小脇 進( 埼玉県 )

小脇 進と申します。
まだ小説も、ショートショートも書くのは初心者です。
※最近は詩作を中心に活動しています。

「分かってないなあコイツ」
と思っても、温かく見守っていて下さい。
よろしくお願いします。
                                                                               
2019年5月19日(日)17時55分頃より始めました。
以上です。

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