ムードが大切

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「ねぇ…お願い。電気消して」
女は俺に懇願する。仕方ないな…
俺は女の要望通り電気を消した。そしてARのスイッチを入れる。
何の面白みもない取調室が一転、刑事ドラマのラストに出てくるような海沿いの崖に変わった。
「そろそろ話してもらえますか…」
俺は渋い声で女を促した。
「あの人が…あの人がいけないんです!」
女の口から語られたのは今回の事件の全貌である。俺はそれを黙って聞く。
全てを自供し終えた女は涙した。
「その罪、しっかりと償ってくるんだ…」
俺はそう締め括り、スイッチを切った。

電気が灯る。一瞬にして何の面白みもない取調室へと戻った。
「これがARを使った新しい取り調べですか!すっごくドキドキしました!ありがとうございます!」
出頭してきた女は嬉しそうに手錠をかけられ、警察官に連れて行かれた。
このAR装置のおかげで出頭数は増えた。取り調べも楽になった。
そして、我々も楽しい!
SF
公開:19/06/19 19:13

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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