グラマーとビキニと幼馴染

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 教育実習生はグラマー担当だった。
 「先生、昨年引退した入嶋沙譜羅に似てねぇ?」
 「はい、十七番の佐保為也クンね。正解。私は『海へ還ったマーメード』こと、入嶋沙譜羅です」
 どよめきと、スマホをポチポチする音が教室に響く。
 「授業中はスマホ禁止です。私のこともSNSに上げないこと」
 「条件~ッ」
 と、教室の窓際後方から声が上がる。
 「はい。八番の上蔵前雄太クン」
 指名された生徒が、ニヤニヤしながら立ち上がる。
 「俺がグラマーの試験で満点とったら、プールの時ビキニ着てくんねぇかなぁ」
 賛同する男子達。顔を顰めたり見合わせたりする女子。俯いて英文法を自習する男女。
 「ビキニ? 懐かしいわ。で、もし満点がとれなかったら?」
 「ハイ!」
 「はい。二十七番の豊島岬サン」
 「雄太がビキニを着ればいい」
 クラス全員拍手喝采。
 岬を見た雄太の口が「オマエナ」という形に動いた。
青春
公開:19/06/17 09:12
更新:19/06/17 10:22
書き出しだけ大賞

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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