RED PERCOLATION #46

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その犬は、毎日、決まった時間の夕刻に駅前を訪れ、帰宅に勤しむ人の流れをしばらく眺めた後、どこかへ帰っていく。そんなルーティンをもう、数年も繰り返していた。

誰が言う。その犬は、飼主をずっと待ち続けているが、その飼主は既にこの世にはいないのだ、と。

よって、その犬は忠犬としてたちまち注目を集め、逝去後は立派な銅像がその地に建立されることになる。

…のだが。

実際の所、その犬が駅前を訪れていた理由は、駅前のコロッケ屋さんを尋ねるといつも美味しいお肉をくれるからだし、駅前の人混みを眺めていたのも、単に趣味が人間観察だったからだ。飼主も存命だし、なんなら現役真っ盛りである。

その犬は、自身が忠犬として祭り上げられていることは知っていた。でも特に気にしていなかった。

なぜなら、毎回くれるコロッケ屋さんのお肉が、これでもかと言わんばかりに美味しいからだ。
それで十分幸せだった。

【忠犬】
その他
公開:19/06/17 01:01

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