空洞

遥人は、休日を利用して、中古車販売店に来ていた。

今日は、日曜日ということもあり、カップルや家族連れの客がいたるところで様々な色や形をした車を眺めたり、自動者販売員と値段の交渉をしていた。

遥人は、ぼんやりと車を物色した。
このまま遠くに行けるなら、どの車を選んでも良かったが、せっかく、近所の定食屋で働いて、コツコツと貯めた貯金をはたくのなら、低燃費の車を購入しようと考えていた。

遥人は一台のサイドガラスに羽のついた車に目が止まった。
自動車販売員は、遥人に近づき、手をこねて会話をはじめた。

「この車は世界に一台だけしかない非常に珍しい車です。この車があればどこまでも羽ばたいて飛んでいけます。宇宙でも天国でもあなたの望む行きたい場所に」

自動者販売員は、運転席のドアを開けた。
その中は空洞で、ハンドルやギアなどの車に本来備え付けられている部品は一つもなかった。