クラリス

0
8

その子は何も考えていないように見えた。
後にそう思うのは、こちらが完全に相手の支配下に入ってしまったことすら気づかなかったからだ。

こちらのことなんか全く気に留めない様子が、それに拍車をかけることになった。明日の天気でも気にしているかのような眼差しと、その仕草は確かにそうだった。
余計に気になった。こちらの方が気を使って、少しでも構う素振りをしたりすると、途端に身をよじって離れようとするから始末におけない。

仕方がないから、少し間を空けて手招きをすると、人懐こい目をして近づいて来た。そして意外な事に足元にピタリと沿って離れなくなった。これがツンデレの極致。
そのギャップに、驚いているとヒラリと身を交わしてジャンプしたかと思うと膝の上に座って澄ました顔をする。

それから、彼女はずっとそばから離れない。
朝も昼も、それこそ夜もこの膝の上が「クラリス」の指定席になったのはあの時からだった。
恋愛
公開:19/06/17 22:26
子猫

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容