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「今日のご飯は奮発したよ」
そういって妻の前に大好物のオムライスを置く。
妻はただ黙ってにこにこと笑っていた。
 
私と妻は幼なじみで家も隣同士、
当たり前のように食卓を囲んでおかずの取り合いなど
したものだった。
妻が高校生になり、料理の勉強という題目で
試食、もとい毒見役をさせられたのは今でもよく覚えている。
幸い、味音痴といっても軽度なものですぐ美味しいものをつくれるようになったがそれまでは胃腸薬が手放せなかった。
カレーがみそ味だったのは今でもトラウマだ。

結婚してからは忙しい中三度三度きちんと食事を作ってくれた。
「我が家一子相伝よ」と笑いながら母から教わった料理を
作る姿はまさに主婦の鏡だった。
子供が育ち、二人暮らしに戻ってからも料理をなまけることは
なかった。



「さてそろそろいただくとしようか」
そう言って妻の遺影からそなえたご飯をお下げした。
公開:19/06/14 20:57

ばめどー

ぼちぼちやっていこうと思います。
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