夜が訪れると賢くなる

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『行ってきます』
影はそう言って私から離れると三角の耳を矢印のように上に向け、ぐんぐんと空に昇って行った。
今は夜。別に影がいなくて困ることはない。気付く者もいない。
空を見上げる。人の目には暗くて何も見えないだろうが猫の優れた夜目にはいくつもの影が空に昇っていくのが分かる。今夜は集まりが良いようだ。
猫は気まぐれだ。呼びかけに応じることもあれば、応じないこともある。
集まりが悪ければ王は口をへの字に曲げる。集まりが良ければ口をにんまりと曲げる。
大きく開いた半円の口は何でも食べてしまいそうだ。
大きく開いた真円の眼は地上の全てを見透かしていそうだ。
偉大な王のことを人間は「月」と呼んでいる。
今日も王は影に知恵を与えてくれる。知恵を与えられた影はその目を爛々と光らせる。
その光を人間は「星」と呼んでいる。
人間は知らない。夜の支配者が猫であることも夜が訪れる度に猫が賢くなっていることも。
ファンタジー
公開:19/06/14 18:57

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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