変なねこさん

26
65

満員電車が駅に到着。
「きゃあああ!」
女性の悲鳴だ。
「どうしました!」
駅員がやってきた。
女性のロングスカートがもぞもぞと動いている。
暖簾をくぐるようにでてきたのは、腹巻き姿の猫だった。
『にゃんだ?キャーットきこえたにゃ!』
完全にすっとぼけている。猫だましか。
「このねこさん、変なんです!」
女性が猫の首根っこをつかんで、訴える。
「なんだ君は!」
『にゃんだちみはってか、そうだにゃ、我輩が変なねこさんです』
猫は踊り出す。
『変なねこさんにゃから~変なねこさん♪』
肉球ポンポン、前足びょーん。
『変なねこさんにゃから~変なねこさん♪』
前足くるくる、体をくるりん。
『ヘンナネコサンニャカラヘンナネコサン♪』
あ、テンポが上がった。癖になる動き。
『だっぷんにゃ』
ポロポロ。まるで用は済んだみたいな顔。

(か、かわいい)

現場をひっかき回すと、変なねこさんは姿をくらました。
ファンタジー
公開:19/06/14 17:23
志村けん

そるとばたあ( 神奈川 )

★そるとばたあの400字SSは、ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語がコンセプトです!

★第19回坊っちゃん文学賞大賞『ジャイアントキリン群』

★2025年12月、2冊同時刊行の電子書籍
『3分間のまどろみ カプセルストーリー』(Gakken)に『恐竜バーガー』寄稿。

・カプセルストーリー(恐竜バーガー、『菊池

の選択』、六文字の返信ほか)
https://amzn.asia/d/8qmIuR7

・カプセルストーリー(特殊外来種ハンター、カンガルー・ノート、露の楽譜ほか) 
https://amzn.asia/d/iW14MdM

ショートショートの可能性と豊かさが詰まったアンソロジーですのでぜひ!
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容