背比べ

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淳は僕より背が低かった。そのくせ負けず嫌いで、背比べなんかをすると「いつか抜かしてやる」と悔しがった。僕と淳は何をするにも一緒で、ついには一緒に会社を立ち上げた。会社は順調に業績を伸ばし、ビルを丸ごと貸切るほど成長した。

その頃になると、社員は私を怖がった。震えた手で資料を持ってくる様子を見ると、申し訳ない気持ちになる。社員を見くだす気はないのだが、「社長」という肩書から漏れ出す威厳が邪魔をした。でも、中には私を恐れず、社長室に直談判しに来る奴もいた。見上げた根性だと思い、私は彼を重用した。一時期雲行きの怪しかった業績も彼のおかげで持ち直した。

「社長、晴れましたね」
ある日、彼の言葉につられて社長室から外を見た。雨上がりの空にかかる虹の切れ端が、遠くの高層ビルに刺さっていた。そこは、淳が独立して興した会社だった。
「いつか抜かしてやる」
久しぶりに見上げた空に、今度は僕が誓っていた。
その他
公開:19/06/14 18:00
更新:19/06/15 05:37
雨上がり

Miraishi

「カミヒトエ」
どこかつながりのあるひとつの世界。
それでも、それぞれに独立した物語がある。
僕たちの生きている現実世界にとても近くて、
だけどそれは、全て作り話。
原稿用紙1枚分の積み重ねで創る、
現実と紙一重のフィクションの世界。

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