夜道を引く猫

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残業でくたびれた帰り道。
国道脇の歩道に座っていた黒猫がチラリと僕を見た。猫は車のライトが通り過ぎると車道を横切り、高架下の茂みに消えた。行方が気になるものの、僕はそのまま家路に就いた。
翌日。僕は通勤中に足を止めた。
「何これ」
歩道から高架下にかけて、黒い影が亀裂のように走っていた。横切ろうとした車は、影に落ちて沈んでいった。
「遅刻だな」
迂回して会社に向かうと、後ろを黒猫がついてきた。猫の影は、墨を垂らすように道を黒く染めていった。

道中、雨が降りだした。僕は猫を抱えてコンビニの外で雨宿りした。

ブルブルッ

猫が全身を震わすと、黒い飛沫で僕は真っ黒になった。

……ブルルッ

コンビニ、会社、そして空まで飛沫が飛ぶと辺りは闇に包まれた。

朝9時に灯る街灯を見上げ、僕は叫んだ。

「帰ろう! 呑みに行こう!」

夜を飛ばした白猫は、満月のような瞳で僕の行く手を照らしてくれた。
ファンタジー
公開:19/06/15 22:51
更新:19/07/09 22:53

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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