ミルク

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一年つきあっていた彼女に振られた雨の夜、僕は裏庭の紫陽花の前で、子猫と出会った。
「お前もひとりぼっちか。家に来るか?」子猫はみゃあ、と返事をした。抱き上げると子猫は震えていてこのままでは死んでしまうと思った。
体を洗い、乾かすと、みすぼらしかった体毛はふわふわになった。色が白だったので『ミルク』と名前をつけた。
牛乳を飲みお腹が満たされたのか、ミルクは僕の膝の上で眠り始めた。失恋で傷ついた心が癒されるようだった。
翌朝、目が覚めるとミルクがいない。鳴き声をたどっていくと玄関の外にいた。「濡れるぞ」ミルクはにゃあ、と鳴くと僕の手を舐めて、さっ、とどこかへ行ってしまった。
ああ、そうだった。なんで忘れていたんだろう。助けられなかったんだ。
部屋に戻るとお菓子の小箱の中に、ミルクの亡骸が入れられていた。
「ごめんな。助けてやれなくて」

今年も青に混じって、一輪だけ真っ白な、裏庭の紫陽花の花。
その他
公開:19/06/15 20:01
更新:19/06/17 00:03
#猫 #子猫 #雨 #紫陽花

深月凛音( 埼玉県 )

創作が大好きなアラフォー主婦です。ショートショート小説に魅入られ、日々精進中です。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

Twitter : https://twitter.com/rinne_starlight

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