忘却の窓辺

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「対象そのものを忘れても、『忘れた』という事象は延々刻まれている。その媒体であり集合意識体を、何レコードと言ったかな?」
時々不可解を口走る奴が、例によって、独り言だか質問だか微差判定的音程で発声しながら、壁に8割5分埋まった、開かない窓を開けようと足掻いている。
「クラシックレコード」
「……それだ!」
違うから。俺はイメージ上の正解を知ってるが、面倒臭いが7割と面白いが3割2分で(若干過剰)放置する。真面目に人前で吹聴して、面目丸潰れ。結末まで見えても軌道修正しないし、こいつも一切懲りない。
「壁の中の錠を解除出来れば、窓は開くのだが、誰が何の意図で、この不合理な設計に……」
それはお前だ健忘症め。
「外回って開ければ?」
「なる程、盲点だった」

『駄目だ開かない!』
鍵掛かってんだよ先に気付けよ。
まったく、紙一重の何とやらだ。
そんな奴に振り回されて付き合ってる、俺程じゃないが。
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公開:19/06/15 19:07

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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