栗花落(つゆり)

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まるで、夢の様に美しかったのです。
むせ返る様な雨の香りを纏って、白い光が輝くのです。氾濫する乱反射の、きらきらと、ほろほろと砕け散る季節を、私は決して忘れまいと、心に念じたのです。

けれど、この光が何と云う名であるのか、私には判らないのです。
此処は違う、という事ばかりが、落ちた私の頭を回って、私の居場所が何処であったのか、まるで思い出せないのです。
一つだけ判るとすれば、空から地面へ上って行く光よりも、背中を逆さに伝う雨の方が、私のぶら下がった眼球には、温かい色として映っていた事です。
ホラー
公開:19/06/15 16:57
注)この花は栗ではありません

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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