Château de botté~長靴の城

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カラバ侯爵は、弱り果てておりました。
彼が爵位を継いだのは十日前。粉挽きに拾われた三男坊が、『貴方は侯爵様の落し胤です』と告げられ、見知らぬ土地へ連行されたのです。
偏屈な独り者の侯爵が急逝し、借金まみれの城と、頼りない家来と、広大な荒れ地と飢えた農民と――つまり貧乏籤を引かされたのでした。

まだ十八の若造に何が出来るでしょう。元の生活の方が、粉があるだけ良かった。パンも並ばぬ食卓と、家から履いてきた長靴を眺め、溜息を吐いておりますと、
「侯爵様。門に旅人が」
捨て鉢の侯爵は、旅人を城へ通しました。
「生憎もう、城に食べ物は無い。この靴を煮て食べなさい」
これを聞いた旅人は、侯爵の長靴を履き、猛然と走って行きました。

その日の夕刻、城門に王宮の馬車が停まりました。
旅人から侯爵の行いを耳にした国王様は、彼を娘の婿に迎え、侯爵の城は、長靴印のワインで有名な、シャトー(酒蔵)になりました。
ファンタジー
公開:19/06/15 14:52
更新:19/06/15 15:03
長靴を履いた猫: シャルル・ペロー童話(仏) シャトー(城/ワイン蔵)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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