高台からの眺め

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 久しぶりに晴れた。見晴らしの良い高台にでも行ってみよう。
 俺は支度を始めたが、思った以上の重装備になってしまった。外に出ると、降り続いた雨のせいで道は黒くぬかるんでいる。誰かとすれ違うこともなく坂道が始まった。静けさの中に、自分の呼吸音が響き渡る。息を荒くして苦戦しながらも、高台の頂上に辿り着いた。高い所からの見晴らしはとても良い。しかし景色が良いとは言えない。見渡す限り廃墟が広がっているだけだ。
 何がきっかけだったのかも分からないまま、二国間の争いが全面核戦争に拡大し、熱線と衝撃波そして放射線が世界を覆い尽くした。動くものは何も見えない。硝煙さえもだ。聞こえてくるのは、防護服の中で反響する自分の呼吸音と、放射線量計が発するノイズに似た警告音のみ。
 酸素ボンベの残量も少なくなってきた。今日はもう帰ろう。俺は高台を後にした。太陽が沈む西の彼方には、暗く重い雲が立ち込めていた。
その他
公開:19/06/15 13:38

黒柴田マリ( ヨコハマ )

黒柴田マリと申します。ショートショート、大好きです。あと、リンゴも大好きです。

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