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いつもパン屋の前にいて、誰にでも頭やお腹をなでさせてはじゃれて遊ぶ人懐こい黒猫は皆にジジと呼ばれていた。
初雪が降った日。
「今夜だけ泊めていい?」と子供にありがちな残酷な言葉が口をつく。
「今夜だけ?雪は毎日降るんだよ?」と言う母に
「じゃあずっと!ずっとうちにおいていい?」と母のコートをつかみ必死に頼んだ。
「猫のご飯買いに行こうか?」と言われ、弾けるようにジジにかけより抱き上げた。
その日からジジはうちの猫になった。
ジジは脱走の名人で逃げる先は、私達がいつも遊んだパン屋の前だった。
あれから10年。桜の季節にジジは外に出たまま帰らなかった。丸一年毎日のようにパン屋に通ったがとうとう会えなかった。
そんな別れをしたせいか、いつになっても黒猫を見かけるとジジを思い出す。それがどんなに小さな仔猫でも、どんなにふとっちょの大猫でもだ。そう、今テレビの中でゾンビダンスを踊っている黒猫でも。
その他
公開:19/06/15 12:03
更新:19/06/15 23:04

水田村(みたむら)

ご無沙汰しておりました。リハビリ中につき日記のようなものしか出ませんがよろしくお願いいたします。
Twitterアカウント(@mitamura2018)

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