思い出

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「お前もついてないな」
そう呟くと、叔父さんは小梅を段ボールに寝かせ、僕の手を引いてその場を去った。僕の両親と、小梅の親の「梅さん」は、その数日前に交通事故で亡くなった。動物病院からの帰り道だった。人間と猫。遺された2人、自力で生きていくには幼すぎた。

それから15年。この歳になって分かることがある。親への感謝。育ててくれた叔父夫婦への感謝。あの日、小梅を置いていったことを責めたが、当時の叔父の気持ちを思うと胸が痛い。それと、これも後から分かったことだが、どうやら僕は猫アレルギーらしい。

お酒の味はまだ分からないけど、そういう気分なので呑みながらアルバムを捲る。小梅は今頃どうしているだろうか。新しい飼い主に僕の悪口でも言いながら、元気に暮らしているだろうか。
途端、くしゃみが止まらなくなった。小梅が噂しているのか。それとも、アルバムに挟まった猫の毛が原因か。
どちらにせよ、嬉しかった。
その他
公開:19/06/13 18:40
更新:19/06/15 03:44
雨上がり

Miraishi

「カミヒトエ」
どこかつながりのあるひとつの世界。
それでも、それぞれに独立した物語がある。
僕たちの生きている現実世界にとても近くて、
だけどそれは、全て作り話。
原稿用紙1枚分の積み重ねで創る、
現実と紙一重のフィクションの世界。

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