227. 九十九物語

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喧嘩して部屋を出ていった彼女が、俺が仕事に行っている間に私物を取りに来ていた。
俺たちの共通の趣味は読書だが、好みのジャンルはまるで違ったので、彼女の愛読書は全て持っていってもらったはずだった、が…。
帰宅して部屋を一瞥すると、前から俺に読ませようとしていた怪談集の「百物語」がまるで呪いのように、俺たちのベッドの彼女の使っていた枕の上に置かれてあった。
見つけた瞬間は恐怖で固まったが、あいつの最後の嫌がらせに負けるもんか!恐る恐る読んでみることに。
俺は元カノが感心するほど速読なのだが、これも一気に読むとあいつは思ってる気がする。なので敢えて99話目で読むのを止めてみた。恐怖で震えながらもなんとかそこまでたどり着くと、その日は家中の明かりを付けたまま布団を被って眠った。
翌朝、元カノが布団の横に座っていた。

「ちょっとー、最後まで読んでくれないと、私このままこの世から消えちゃうじゃん!」
その他
公開:19/06/13 21:00
更新:19/06/13 18:11

ことのは もも。( 日本 関西 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていこうと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

カントー地方在住
 

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