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「全域で停電らしいな」
父がスマフォの画面を見て言っている。
町内のスピーカーから放送が流れた。
ダムが満水状態。放流も出来ないため、周辺住民の高台避難を呼び掛けていた。
「僕、サンちゃんの所に行ってくる」
「ちゃんと一緒にいるのよ」
注意する母。サンちゃんの家族といる事を約束し、家を出た。
サンちゃんは家で家族と一緒だったが、今にも泣き出しそうに声をあげていた。
避難する道。谷底の方を指して、はしゃぎ出した。
繋いだ手を放ち、勢いよく駆け出す。
追い付いた先は川原で、小さく光る発光体が飛んでいた。
月の明かりが遮られ、暗い空間に、
幾重の筋があった。
その光景に時間が停まってしまった。目が離せない。
すると、体が急に宙に上がり、真っ暗になった。
気がつくと、大人達が心配そうに顔を低くして囲んでいた。
「サンちゃん」
僕は呼んだ。
その日の夜はどこを見ても
灯りは消えていた。
その他
公開:19/06/13 10:26

小脇 進( 埼玉県 )

小脇 進と申します。
まだ小説も、ショートショートも書くのは初心者です。
※最近は詩作を中心に活動しています。

「分かってないなあコイツ」
と思っても、温かく見守っていて下さい。
よろしくお願いします。
                                                                               
2019年5月19日(日)17時55分頃より始めました。
以上です。

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