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世界を変えたいですか。自分を変えたいですか。
夕立を避けてバスターミナルに駆け込んだ。26番と書かれたバス停だった。
年齢も性別もバラバラな20名ほどの人たちが、一列に並んで静かにバスを待っていた。全員が黒いバインダーと白い小箱を持ち、ずぶ濡れだ。時刻表を見ると、日に5本しかないバスの最終便が、10分後に到着することになっていて、その終点は、ある宗教団体の支部なのだった。
世界を変えたいですか。自分を変えたいですか。
そんな異様な雰囲気に後ずさりした時、僕は何かを踏んだ。振り向くと黒い服を着た女の人が微笑んでいた。足元を見ると、僕はその人の裸足の親指を靴の踵で踏んでいた。それだけではない。長い行列の全員が、靴を履いていなかった。
す、すみません。
変われますよ。バスが来ました。
満員のバスの窓から、バス停に残された一足の靴が、瞬く間に遠ざかっていくのが見えた。
夕立を避けてバスターミナルに駆け込んだ。26番と書かれたバス停だった。
年齢も性別もバラバラな20名ほどの人たちが、一列に並んで静かにバスを待っていた。全員が黒いバインダーと白い小箱を持ち、ずぶ濡れだ。時刻表を見ると、日に5本しかないバスの最終便が、10分後に到着することになっていて、その終点は、ある宗教団体の支部なのだった。
世界を変えたいですか。自分を変えたいですか。
そんな異様な雰囲気に後ずさりした時、僕は何かを踏んだ。振り向くと黒い服を着た女の人が微笑んでいた。足元を見ると、僕はその人の裸足の親指を靴の踵で踏んでいた。それだけではない。長い行列の全員が、靴を履いていなかった。
す、すみません。
変われますよ。バスが来ました。
満員のバスの窓から、バス停に残された一足の靴が、瞬く間に遠ざかっていくのが見えた。
ホラー
公開:19/06/14 10:11
更新:19/06/14 14:55
更新:19/06/14 14:55
書き出しだけ大賞
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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