石川の舌

0
4

うちで鍋パーティしようぜ、と石川に誘われたのが一時間前。目の前にはすでに出来上がったキムチ鍋と出来上がった石川。

石川とは最近仲良くなって、こうして今、同じ鍋の飯を食おうとしているのだ。石川が白菜やらネギやらの野菜を器に取る。石川がどれどれ、と一口食べるのを僕は見守る。どれどれ、と言ってから野菜を冷ますだけでなかなか食べない石川に僕は切り出す。
「猫舌なの?」
「うん。熱いものが苦手で」
猫舌なのにどうして鍋を食べようと思ったのだろうかという疑問は嚥下して、石川が食べるのを待つ。五フーフーしてやっと、しなしなの野菜を口に入れた。感想はいかに。
「にゃっ」
うん? 猫なんていたっけ。
「にゃー」
石川の口から聞こえる。首を傾げていると石川が聞いてくる。
「どうした?」
「今、猫鳴かなかった?」
「ああ、これこれ」
と言って出された石川の舌が猫だった。猫舌じゃなくて舌猫じゃん。
その他
公開:19/06/14 09:56

上北 うてな

行き場を失い、メモ帳に彷徨うネタ達をここで消化&昇華させてます。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容