三毛部長

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「猫は寡黙なのです」
昇進試験対策のため、僕はネイティブの先生から猫語の授業を受けていた。
「言葉より仕草で判断、ですね」
「そう。今、私はどんな感情?」
先生はシッポをフリフリしていた。
「嬉しい」
「……詳細に。他も見て」
「ひげを前に出してる……あ、何かに興味を惹かれてわくわくしてます」
「その通り。日本語を話せる猫は稀です。人間が歩み寄ってくださいね」

翌日。オフィスのスピーカーから「ナア」と猫の鳴き声が響いた。部長のまんまるな瞳は一点を見つめていた。
「僕だ……」
御愁傷様、という同僚の声を受けて、三毛部長の席に向かった。
「何か」
部長はクンクンと机の書類を嗅いだ。
「今度のコンペに出す見積りですね……あれ?」
マルが一つ、爪で削られていた。
「まさか。これを出すんですか」
「ナア」
部長は僕の右手に頬擦りした。マーキングだ。
さすが部長。三毛なのに体毛も性格も真っ黒だ。
ファンタジー
公開:19/06/14 08:30
更新:19/07/09 20:12

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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