眠り猿

毒リンゴ・白雪。
この毒リンゴを食べた者は、深い眠りにつくという。
そんな毒リンゴを入荷した果実店があった。寂れた商店街の一角にひっそり佇む果実店である。
希少種なリンゴを扱う事で、お客が集まらないかと考えたのである。
しかし、いくら希少種とはいえ、毒リンゴは毒リンゴ。興味を示す者はいても、買おうとする者はおらず、やがてその存在も忘れられていった。

そんなある日、果実店に一匹の猿が忍び込んだ。そして、売れないにも関わらず、店主が仕入れを続けていた毒リンゴを食べてしまったのだ。
こうして猿は、深い眠りについてしまった。


「出た！　鼻ちょうちん！」
「おー！　ラッキー！」
「拝め、拝めー！」

数ヶ月後。商店街は活気を取り戻していた。
毒リンゴを食べ、深い眠りについた猿が「眠り猿」として人気者になっていたのだ。
それは眠り猿の鼻ちょうちんを見ると良い事がある、との噂が広がったからである。