わら

「私、人魚姫になりたいの」
『では、これを授けよう』
「これは……」
『お前の願いを叶えてくれる事だろう』

そんなわけで、お寺の観音様に貰ったのが、この藁人形。これ、どうするの？　と思いながら、藁人形の手足をクイクイ動かしてみた。
すると妙に楽しくなってきて、笑いが込み上げてきた。そこに一人の女性が通りかかった。
「楽しそうね。見ているだけで元気が出てくるわ」
笑い転げている私が面白かったらしく、お礼にと蜜柑を貰った。
その後、蜜柑は美しい布に、美しい布は馬に、馬は畑と家に、といった感じで、私の持ち物はどんどん豪華になっていった。
あぁ、もう笑いが止まらない。そんな私は、いつしか笑い姫として人気者になっていた。

「私、なりたかったのは人魚姫よ？」
『何？　人気者、ではなかったのか？』
まさか観音様の勘違いだったなんて。こうして私の夢は泡となって消えた。あはは！
もう笑いが、止まらない。