人魚の墓

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俺は長寿薬の開発に成功した。成功に比例して女たちも寄ってきた。その中で、どうしても一人だけその魅力に抗えない美しい娘がいた。彼女を喜ばせようと一流の料理人がいる高級料亭で食事をした。
「私、海が好きなの。今度、波の音が聞こえるところへ行きたいわ」
「そうだね。今度の日曜日、行こうか。君との美しい思い出をつくりたいよ」
娘は、笑みを浮かべた。
日曜日、波打ち際で娘は俺に唐突に言った。
「人魚の肉って食べると永遠の命を授かるそうよ。もし、そうなら人魚の肉で薬を作れば、不死といわないまでも健康長寿を望めるわね」
「え?!」
意表を突かれ思わず娘の方を振り向きざま、娘は野獣の力で俺を海の中へ引きずり込んだ。
「なんで、海に還さなかった?」
「く、苦しい。い、息が…」
俺はもがいたが、いつのまにか苦しみは消えていた。
波打ち際には足跡も人影もなくなり、俺の溺死体があがることは決してなかった。
その他
公開:19/06/13 21:38
schoo わらしべマーメイド 高級料亭サンデー

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