半化粧

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学校の裏庭に茂る半夏生の、半端に色の付いた葉。
「下手くそな化粧だな」
つい口が滑った。

次の日、全部真っ白にぬりつぶされていた。
どうしよう。冗談のつもりだったのに。
「白ぬりオバケみたいだな」
口から出た言葉は、よりによってそんなだった。

次の日、花穂に真っ赤な紅が差してあった。
「似合わないマネするな」
叩き付けて、逃げる様に帰った。

次の日は朝から雨だった。

放課後、雨上がりのグラウンドを走って行った。
「ひどい事言ってごめん!」
頭を下げたところで、茂みの中のセーラー服と目が合った。
そうか。向かいに美術室があったんだ。
「ひどい事して、ごめんなさい」
雨で流れた水彩や、汚れた葉や花を、二人で掃除した。
染みてしまった色は、全部元には戻せなかった。
暗くなるまで掛かって、それでも大分きれいになった。
「やっぱり、元のままが良いや」
「うん」

手をつないで、一緒に帰った。
青春
公開:19/06/11 20:53
半夏生(はんげしょう)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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