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高速のサービスエリアで休憩している時のこと。
どんより曇り空をぼうっと眺めていると、車のフロントガラスをコツコツと叩く音がした。
一拍遅れて、目の前に焦点を合わせた頃には、外の風景もぼやけてしまっていた。
耳を打つのは水が落ちて滑る音だけ。こんな時の空気はしんみりする。

ふと、何か呟きのようなものが聞こえた。
「全く。人使い荒いよな。」
「この時期が繁忙期だからってさ。」
「消えた分はすぐ補充できると思ってるのかね。」

世知辛い。
湿っぽい呟きは雨声と重なって聞こえてくる。
「上昇気流に乗れていれば、今頃は欧州にいたはずなのに。」
「私はもう他の雲に転職する。」
「雲の上の連中には俺達の気持ちなんて分からないのさ。」

暫くすると、雨はやみ、雲は途切れた。
雨?雲?の業界にも色々あるもんだな。
「さて、私も気合い入れて運転するか!」
そう独りごちて車を走らせた。
沢山の雨粒を載せて。
ファンタジー
公開:19/06/11 20:39

普通のへいわじん

月の音色にて噂を聞きまして。
よろしくお願いいたします。

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