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「にゃあーぉ」
僕は猫だが、いま鳴いたのは僕ではない。大きな体を窮屈そうに折りたたんで、ひげ面を近づけてくるこの男。飼い主のこの男が泣いたのだ。男は、いつもこの声で話しかけてくる。
少し甲高く、長めに鳴くこの声は、細かい違いこそあるものの、猫語の感謝の言葉に近かった。男は意味も分からず一般的な猫の真似をしているだけだろうけど。日本語を覚えたての外国人がやたら「アリガトゴザマス」と言う感覚に近いかもしれない。
部屋を荒らして怒られる時も、なぜか感謝される。朝の挨拶も、仕事から帰ってきて疲れた顔を隠して笑う時もこの声だ。
そういえば、道端で助けを求めて鳴いていた僕が拾われた時、助けた方が先に「アリガトゴザマス」なんて言うもんだから、あの時は思わず笑ってしまったっけ。
おかげで僕はここまで長く生きることができた。だから、最後の力を振り絞って、鳴いてみる。少し甲高く、長めに
「にゃあーぉ」
僕は猫だが、いま鳴いたのは僕ではない。大きな体を窮屈そうに折りたたんで、ひげ面を近づけてくるこの男。飼い主のこの男が泣いたのだ。男は、いつもこの声で話しかけてくる。
少し甲高く、長めに鳴くこの声は、細かい違いこそあるものの、猫語の感謝の言葉に近かった。男は意味も分からず一般的な猫の真似をしているだけだろうけど。日本語を覚えたての外国人がやたら「アリガトゴザマス」と言う感覚に近いかもしれない。
部屋を荒らして怒られる時も、なぜか感謝される。朝の挨拶も、仕事から帰ってきて疲れた顔を隠して笑う時もこの声だ。
そういえば、道端で助けを求めて鳴いていた僕が拾われた時、助けた方が先に「アリガトゴザマス」なんて言うもんだから、あの時は思わず笑ってしまったっけ。
おかげで僕はここまで長く生きることができた。だから、最後の力を振り絞って、鳴いてみる。少し甲高く、長めに
「にゃあーぉ」
その他
公開:19/06/11 17:54
更新:19/06/15 03:34
更新:19/06/15 03:34
猫
雨上がり
「カミヒトエ」
どこかつながりのあるひとつの世界。
それでも、それぞれに独立した物語がある。
僕たちの生きている現実世界にとても近くて、
だけどそれは、全て作り話。
原稿用紙1枚分の積み重ねで創る、
現実と紙一重のフィクションの世界。
その他の活動など↓
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