おばあちゃんの猫

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「お前さん、ずいぶんと小さくなったねえ。昔はこんな猫背じゃなくて、もっとピンとしてたよお」
おばあちゃんは、僕を誰かと勘違いしているようだ。
ご主人様が亡くなって数か月。
おばあちゃんの背中に、日増しに淋しさが積もっていた。
ときどき、自分の家が分からなくなることがあるそうだ。
「でも、お前さんに会えてよかったよお。急にいなくなるんだから、心配してねえ」
そういって、いつもの縁側でおばあちゃんは僕を撫でる。
なんにも変わらない、あったかい手で。
もうあんまり開かない目で僕を見つめるけれど、この頃おばあちゃんは僕を見ると、やけに嬉しそうだ。
僕は丸まって、おばあちゃんの膝で眠りについた。
「まあまあ、お前さんったらこんなところで寝たら、風邪を引きますよ」
おばあちゃんはゆっくりと、僕に布団をかぶせた。
「私もちょっと、眠ろうかねえ」
そういうとおばあちゃんも、すっかり眠り込んでしまった。
公開:19/06/11 15:28
更新:19/06/11 17:22

ふじのん

歓びは朝とともにやってくる。

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