令和元年3月7日

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 令和元年3月7日

 官房室では、この日付の記された文書を巡って、不毛とも思える議論が続いていた。
 これが、令和元年4月1日以降に作成された文書であれば「あ、年号間違っちゃった」で済ませることができる。だが、文章の脱稿日は、1980年3月7日。
 山口百恵の婚約引退発表の記事に記されていたのだ。
「実害は無いのではありませんか? 媒体には校正済みの『昭和55年』で記載されていたわけですし」
「いや、我々はこの記事を書いた男の意図を知りたいのだ」
 記者は行方不明と、内閣調査室からの報告が上がっていた。
「令和元年、というペンネームなのでは?」
「なら『昭和』などと校正が入るはずはない」
「令和が文字通り年号だとして、婚約引退発表が、この中の誰かに対する任務完了報告だったとしたら?」
「だ、誰だね君は!」
「どうやって、入ってきた!」
 だが次の瞬間、男の姿は靄のように消え去っていた。
SF
公開:19/06/12 12:08
書き出しだけ大賞

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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