予感

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嫌な予感がした。ギギという音を聞いたのだ。
予感は的中し、棚が壊れて資料が散乱する。
「最近ついてないな」
資料を拾いに来てくれた後輩にこぼす。
「そのうちいいことありますって。ほら、お家に帰って自慢の猫ちゃんに癒してもらいましょ!」
「…ああ。ありがとう」
その猫も一か月前に亡くなったのだが。

ともかく後輩の言葉に甘えて早めに家路につくことにした。4階にあるオフィスのエレベーターは壊れていて、階段で1階まで降りる。ビルを出て一歩目、さっき降った雨でできた水たまりを踏む。全く、ついていない。

少し歩くと、目の前を黒猫が横切ろうとしていた。これ以上不幸な目にあってたまるかと、猫の進行方向に合わせて斜めに歩く。黒猫に導かれるようにして向かった先に、段ボールに入った子猫を見つけた。
「お前もついてないな」と言って抱き上げる。
雨上がりの空には虹がかかっていて、その時ばかりはいい予感がした。
その他
公開:19/06/12 04:14
更新:19/06/15 03:29
雨上がり

Miraishi

「カミヒトエ」
どこかつながりのあるひとつの世界。
それでも、それぞれに独立した物語がある。
僕たちの生きている現実世界にとても近くて、
だけどそれは、全て作り話。
原稿用紙1枚分の積み重ねで創る、
現実と紙一重のフィクションの世界。

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