漆（うるし）が映すのは!?

地方ロケに来たミチさん。久々にクラブ「navel」に寄った。
“地球のおへそ”と称するお店のママと、常連のバイオリニストのタマゴ、サトシ君と三人で話すうち、
サトシくんが悩みを話し出した。

「彼、プロになろうか、迷ってるの」ママはミチさんに教え、棚から漆（うるし）塗りの器を出した。
「この器を見てみて」と言われ、サトシ君は鈍く輝く黒い漆を見つめる。
「この器は？」
ママは言う。「漆って、樹の中で長い長い歳月を経てきたでしょ。世の中の色々な人の“思い”も吸い込んでいるの」

サトシ君とミチさんが、黒い表面を見つめていると、ふいに、ぽつんと人の姿が浮かんだ。
「あッ」
それはスポットライトを浴びてバイオリンを弾く、サトシ君の姿だった。

「これね、未来を映す器。漆の中の記憶が、未来を予言するのかもね」
彼は笑顔になった。
「何だか不思議だけど、プロになって歩き出してみようかな、と思いました」