橋の向こうへ

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ありがとう。
その一言が喉につかえて出なかった。

君との出会いは5年前。
保護センターで
一匹だけ隔離されていた
のが印象的だった。

サバ白で、妙にシッポの長い猫。
目が合って気が合わないと直感した。

だから、ウチにおいで。
自由にしてて。
君はネコだから。

穏やかな日々に病魔が襲う。
謎の腫瘍が見つかった。

ひたすらに無事を願い、手術成功。
そして、再発。

全てを受け入れたような君の表情は
私の心を優しく締め付けた。

元気な時は元気に
病気なら病気らしく。

「無理しない」を教えてくれた。
私の生き方の原点だ。

最期もあっけなく。
見送りもさせてくれなかったね。

君らしいと静かに涙した。

時々、廊下に気配を感じるよ。
トイレの扉の向こう側とかも。

まだまだ一緒に生きていこう。
君は橋の向こうで生きてるね。

私もこちらで、がんばるよ。
ファンタジー
公開:19/06/10 22:30
更新:19/08/14 22:06

わたしたわし( 日本 )

Twitter「54字の物語」から流れ着きました。
画像は「壬生乃サル」様からいただいた、超お気に入りイラストです。この場でも感謝申し上げます。

SSGさんでは、「あ」から「ん」の順に物語を自分のペースで作る予定です。

何故か「く(釘)」が消えましたが、機械オンチなので、あるあるだとスルーしております。
長い目で見ていただけると助かります。

※猫は枠にとらわれない生き物なので、最初となりました。
よろしくお願いします。

写真はフォトAC様(https://www.photo-ac.com/)とunsplash様のフリー素材を使わせていただいています。感謝しております。

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