外道戦記

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 立ってる者はストーカーでも使えってね!

 御厨弥累縫華(みくりやかさねぬいか)は、遮蔽物皆無の戦闘場の三方向からの追尾ナイフ(十三本)を巧みに誘導しつつ、見守っていた私(42歳・不動産職員)の背後へ身を潜めた。
 カーテンに僅かな隙間のあるアルミサッシ越し以外で、縫華とこれほど接近したことはなかったし、洗い立てでないブラウスの香りを間近に嗅いだこともなかった。
 八本を指の股で、三本を瞼と唇で、一本を膝の間で受けた私には、眉間に飛び来る最後の一本を防ぐ手立ては無かった。
 背後に縫華がいなければ、などとは思わない。私は今、縫華に認知されていたことを知り、互いの息遣いをこれほど近くで感じることを許された。

 私の人生に一片の悔いな…

 ヒュンッ。

 ナイフが鼻先を掠めて落ちた。縫華の鞭が私の顎を撫でた。

 なかなかやるじゃん!
 一生ついて行きます!
 きもい

 戦いは続く。 
ファンタジー
公開:19/06/10 16:22
更新:19/06/10 17:54
書き出しだけ大賞

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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