長ネギ

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同級生の鴨田くんはいつもベルトに長ネギを差していた。
鮮やかな青みが白さを際立てて、見惚れるほどの長ネギを。
「いつも君を見ていた」
そう鴨田くんに告白されたとき、私はよく考えずに、私も、と答えた。
鴨田くんがとてもうれしそうに私を抱きしめたから、違うとは言えなくなって、そのまま私たちは付き合うことになった。
私がいつも見ていたのは、美しい長ネギで、鴨田くんのことではなかった。
どうしていつも長ネギを差しているのか、クラスの誰に聞いてもわからないと言うし、今さら聞けないよといった雰囲気で、私も尻込みしてしまっていた。
聞けば彼は答えてくれただろう。
でも、答えは自分で見つけるべきだと思った。
それから数年が経ち、彼はベルトにエリンギを差すようになった。
私は彼に別れを告げ、美しさを探す旅に出た。
人生はきっと長ネギ。青い岐路に立ち、土に還るまでの一本道。
私はそんな道に憧れた。
青空の下。
公開:19/06/10 14:42

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