24時間営業、始めました

　街路樹の桜が舞い散り、目にも鮮やかな葉桜の季節になった頃。人通りの多い商店街の八百屋さんが、一枚の張り紙を張り出しました。
『２４時間営業、始めました』
　八百屋さんの常連さん達は、
「なぜ２４時間営業を始めたのですか」と不思議に思いながら、店主の老夫婦に尋ねました。老夫婦は
「朝早くから遅くまで、お客さんの出入りが激しいんじゃよ」
「お客さんの声を聞いたら、お店を閉める訳にもいかなくなりましてね」
と、笑顔で答えました。
　そのとき、二人の頭上をかすめていくものがありました。それは二匹のツバメでした。店の奥の天井の巣から、お腹を空かした雛たちの元気な鳴き声が聞こえてきたかと思うと、再びツバメ達は華麗な軌跡を描いて、店先から飛び出していきました。
二人は天井を見上げて、顔をほころばせながら
「来年も２４時間営業で待っとるからな」
「私達も長生きして頑張りましょうね。ねぇ、おじいさん」