スペースデブリ

9
8

閉めきった部屋の中で、きらきらと光る道筋。幼い私には、無数の光の粒が天の川みたいに見えた。宝物だった青いビー玉を透かして一緒に眺める。
「うちゅうみたい」
ビー玉は地球だ。私がそういうと、母は苦笑いして窓を開けた。
部屋の空気が流されて、光の粒――舞っていた埃が消えていった。残念がる私に、母は言った。
「これは埃だからね、掃除しないと。本物の宇宙は、もっと広くて、もっと大きいのよ」
本物の地球も、見れたら素敵よね。
多分、これがきっかけだった。

「おーい、掃除行くぞ」
窓の外を覗いていた私を見て、同僚が言う。
「お前も飽きないよな。毎日見ててもちっとも景色変わらないのにさ」
私は笑って、頑張って覚えた英語で答える。
「ずっと待ってた本物だからね」
窓の外には埃よりずっと明るい星たちと、母のいるビー玉みたいな地球が浮かんでいる。
「スペースデブリの処理ね、了解」
青春
公開:19/06/07 19:09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容