また恋をする

彼女にフラれ、もう二度と恋なんてしないと嘆く友人を俺は励ましていた。
友人は俺が恋は素晴らしいものだと何度説得しても聞く耳を持たない。
仕方ない。耳がダメなら目から説得するとしよう。これを見てくれ。
友人は怪訝な顔をする。それもそうだろう。何せ、そこには普段お目にかかれない一文字が書かれている。

「亦」

友人はこれを「あか」と読んだ。残念。赤にするには横棒が足りないな。上が十でなければいけないんだ。あと一つ足りない。
でもこれを「あか」と読んでくれて安心したよ。何でかって？
この漢字は「また」って読むんだ。あかにあらず。じゅうにあらず。
「また」遠からず恋をするってね。
俺の説明に友人はぽかんとする。心ここにあらずと言ったところだな。
ま、そんな友人に心が戻ってきた時、この字が恋に変わるだろう。
そして「とお」からず、近くに良い女がいることに気付くはず。
俺はお前に対して一途だからな。